第四話
命を削り放った一撃。
超プリズナーパンチ。
己の限界を突破した攻撃は、空までも巻き込んだ。
雲は仰け反り、太陽の光が一層強く成る。
岩は沸騰し砂は蒸発する。
温度の上昇に枷は無い。
熱量は力を生み力は熱源を造る。
荒野を作るのがミサイルだとすれば、この一撃は遥かに威力の面で上回っていた。
「温い一撃ですね」
黒衣の敵。一言。
そして雨が降る。
氷の雨が。雹。
一瞬だけ炎の中に突き刺さり、そして蒸発していく。
無限に振り続ける雹。
そして段々と負け始めたのは、炎の世界。
「なん、だって」
確実に顏を正面から殴りつけた。
それこそ、渾身の力を込めて。
それが、温い。
天変地異さえ起こす一撃を。
命を削り放った一撃を。
「まぁ、弱くは無いですけどね」
完全に炎は止み。
熱は氷に奪われる。
敵の微笑は嘲笑に思える卑屈さが浮き彫りになっていた。
「おぉおぉおおお!」
その一撃は、恐怖から生まれた。
恐怖から逃げる為に。
雹降る中で、先の一撃でグローヴは壊れていた。
それでも。
振るった。
ゴリッ
音が、響く。
焼け付き凍る大地の中央で、血が流れる。
「いてえ」
何の効果も威力も無い、只の拳。
命を削ってまで放ったパンチを容易く受け止め、この一撃に血を流す。
鼻が潰れていた。
プリズナーに感触もあった。
「これですよ」
血を拭い、とても嬉しそうに震えて声を出す敵。
それは狂喜にうち震えているような。
又、殴る。ミラーサングラスはエラーのメッセージしか表示しない。
理解できない者を理解するために。
ゴッ ご ご ご
「う・・あ・・お・・・あ」
殴られる度に声を漏らす敵。
血はベタリと大地を汚す。
「これです、これです、これです!これです!!」
グと、腕を掴んだ。
敵がプリズナーの腕を。
「この力が、欲しい」
「ヤらねー」
「くださいとは言いません。貰いますとも言いません。貴方が欲しい」
「ヤらねえ」
殴り続ける。
「何故です。理由も聴かずにどうして」
殴られ続けるが、立ち続ける敵。
まるでヘヴィ級とモスキート級のボクシング。
俺達のストレートは奴等のジャブなんだ。
そう言われんばかりの勢いで、ただ、一方的に殴り続ける。
「世界の敵だからだ。お前が」
「ならば、私を手伝って下さいとは言いません。私の主を助けて欲しい。
それには君の力が必要で、私の主は誰の敵でも無い」
ここで、ミラーサングラスが機能を復帰する。
運命に計られた様に。
事実。
この敵の発言を全て重箱の隅を突いても余す事無く、事実と認めた。
父の知識の結晶。
それを裏切る事を、プリズナーは知らない。
つまり、敵の発言を真実だと考える。
「・・解った」
最後に一度だけぶん殴り、動きを止める。
そして手を取る。
しかしプリズナーは知らない。
偽りは事実の欠片で構築されていた事を。